MOON CRYSTAL
X
「シェイド・・・・・!大変なの、ティンクが居なくなって・・・・!」
シェイドの姿を見るなり、レイアはまくしたてた。
その様子に一瞬驚きつつも、シェイドは微笑み、
「大丈夫ですよ、先程偶然書庫の隣で見つけました。
今頃はルゥノに連れられて部屋に戻っているはずです」
レイアは胸を撫で下ろした。
「それより、何があったんですか?」
「それが・・・・、どうやら話を聞かれてしまったみたいなの」
「話というと<守人>が狙われている、という・・・?」
「そう、自分達がここへ来た本当の理由を・・・・・・
不注意だったわ、部屋の扉がきちんと閉まってなかったみたいで」
そう言うレイアの表情は暗くなっていた。
それを宥めるかのように、落ち着いた口調でシェイドは言う。
「成程。確かにあの子達には重い事実だったかもしれません。
ですが、あなたがそんな調子ではあの子を困らせるだけですよ」
「でも・・・・・」
レイアは言い淀む。
「しっかりして下さい。代理とはいえ、今オルレアの指揮者は
あなたなんですから」
そこへ、ティンク発見の知らせを受けたサラマが戻って来た。
ルゥノが伝令を飛ばしてくれたのだろう。給仕達も元の持ち場へと帰って行ったようだった。
「お久しぶり、サラマ」
シェイドはサラマを確認すると、挨拶を交わした。そして彼に近づくと、声を落として付け加える。
「こんな形で再会するとは思っていなかったけど」
「ああ、そうだな」
そこへレイアの声が飛んでくる。
「ふたりとも、少し予定が狂ったけど、話を始めてもいいかしら?」
数分後、部屋の中にメナルの声が響いた。
「お願い、一度村へ帰らせて!!」
必死の頼みだった。というのも、全て、村長からの手紙の内容が問題だった。
この村が狙われるのも時間の問題だ、と。だからこそ、ジノンとティンクを避難させるのだ、と。
それを聞いたメナルが声を荒げたのだ。
「そんなっ・・・・!どうして・・・・・。みんなでここへ来ればっ・・・・・・・!」
今にも飛び出して行ってしまいそうな彼女の手を、隣に座るサラマが、無言で引いた。
「落ち着きなさい!私だって辛いのよ。でも、村長さんの気持ちも考えてあげなさい。
どんな思いであなた達を送り出したか・・・・!」
そこでレイアは項垂れてしまった。
代わりにシェイドが続ける。
「・・・・辛い決断だったろうね。でも、賢明な判断だ・・・・・。
村人全てが居なくなっていては、怪しまれてしまうだけだよ。
それから・・・・・。
あの子達の家族だけで避難させれば、という考えもあまり感心できないな。
不自然な留守宅が二軒あっては・・・・・。次期守人を感付かれる危険性もある」
メナルははっとした。確かに今、思ったところだった。なぜ2人の付き添いが自分達なのか、
2人の両親ではいけなかったのか、と。
「御両親が無理なら、あの子達を安心させられる人は限られるでしょう?」
「だから・・・・・、私たちが・・・?」
暫くの沈黙の後、
「俺だけでも行かせてくれないか」
その言葉にメナルは直ぐ様反応する。
「だめ・・・・・っ!サラマ、私にも行かせて!」
その間もレイアは、行かせない、という意見を譲らない。収拾がつきそうにない状況に、
シェイドが水を差した。
「仕方ない、こうしよう。
明日、あの2人を宝珠の所まで案内する。それから今の守人にも会わせて、向こうで一晩引き留めてみるよ。
そうだな・・・・・、制限時間は2日後の正午。それまでに帰ってくること。
君達2人の足なら、何とかなるだろう?」
サラマとメナルの表情が明るくなる一方、レイアの表情は硬くなっていた。
「シェイド、そんな勝手なこと・・・・・・・!」
「レイアさま、行かせてあげてください。責任は私が持ちますから」
どうにかレイアからの許可が下り、サラマ、メナルの2人は早速オルレアを発つことになった。
ジノンとティンクに心配をかけさせない為の配慮だ。
「無理をしては駄目よ。何があっても、深追いはしないで・・・・・必ず戻って来なさい」
出発する2人に、レイアは声をかけた。
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